治大国若烹小鮮
どちらを取るべきか
今日はいつもコメントが少ない「WTO農業交渉」です。テクニカル過ぎて、ともかく、私もちんぷんかんぷんです。現在の議長テキストを読んでみましたが、もうさっぱり意味不明です。困ったものです。
その中で、いつも問題意識をもっていることは「コメ」の扱いです。前のウルグアイ・ラウンドではコメの輸入自由化に踏み切り、その後、あれこれとありましたが、今は毎年精米ベースで76.7万トンを全量輸入することになっています(ちなみに「精米ベース」で数えるのは日本だけです。普通は精米されてない状態で輸入するはずですから、多分輸入時の重量は90万トン弱くらいじゃないかと思います。これは数字を小さく見せるための小技になります。)。そして、この76.7万トンを超える部分については、キロ当たり341円の関税がかかることになります。
さて、今のドーハラウンド交渉ではどうなっているかというと、コメのように関税率が高いものについては7割削減することが求められています。341円×0.3=でおよそ100円くらいまで下がってきます。
なお、今回のドーハラウンド交渉ではすべての従量税(1キロあたり○○円)を従価税(○○%課税)に換算するということになっていますから、上記の計算はちょっと様相を異にします。かつては、キロ341円は500%課税くらいに相当すると言っていましたが、最近は778%という数字が出てくるようです。778%×(1-0.7)ですと、大体234%くらいだということでしょう。
ただ、これには例外があります。どうしてもそこまで削減したくないなら、今度は76.7万トンの輸入分を拡大することで対価を払えばいいですよ、ということになっています。これを重要品目と言います。
(なお、この「重要品目」というのは英語では「sensitive product」。どう訳したものか難しいのですが、かつて塩崎官房長官が記者会見で「センシティブ」とそのまま発言したら、記者から「それって何と訳すのですか?」と聞かれ答えに窮したことから「重要品目」というちょっと変な訳が当てられたというわけです。ただ、これはマスコミの英語能力不足に問題があるように思います。)
例えば、この7割削減を2/3まけてほしければ国内消費量の4%を輸入枠で出しなさい、1/2まけてほしければ3.5%、1/3まけてほしければ3%を輸入枠で出しなさいということになっています。しかも、削減後でも関税率が100%の時は、追加的に0.5%の輸入枠を出しなさいということも決まっています。したがって、国内消費量が800万トンと仮定すると4.5%(4+0.5)で35万トン強を出しなさいということです。4%(3.5+0.5)なら30万トン強、3.5%(3+0.5)なら27万トン程度ですね。その対価として、関税率については、関税削減を2/3まける選択肢だと、778%×(1-7/10×1/3)=596%、1/2だと506%、1/3だと415%くらいです。
ごちゃごちゃ書きましたが、纏めるとこんな選択肢があります。非常に雑な数字ですので雰囲気だけ感じてください。
・ コメの関税率を234%まで下げる。輸入枠の拡大はなし。
・ コメの関税率を415%まで下げるかわりに、輸入枠を約27万トン増やす。
・ コメの関税率を506%まで下げるかわりに、輸入枠を30万トン強増やす。
・ コメの関税率を596%まで下げるかわりに、輸入枠を35万トン強増やす。
さて、この選択肢が提示された時、日本はどれを選択すべきだと思いますか。今の漏れ聞こえてくる方針では、2番目から4番目の中のどれかを選択するかのようです。最初の選択肢はダメだということだそうです。
私は1番目の選択肢も十分に検討すべきではないかなと思うのです。ここでは便宜的に「250%」と書きましたが、計算の仕方で小技を使えば多分これを300%を超えるくらいの水準に持ってくることは可能でしょう。キロ当たり341円→778%の現行の計算だって、どの程度確たる根拠に基づいているかというと、間違っているとは言いませんが操作可能な余地があるのです。
実は前政権で石破大臣は「重要品目をむやみやたらと拡大することばかり考えるのではなく、輸入枠(関税割当)拡大との見合いで考えるべき。」といった発言をしていました。正にその通りなのです。35万トンも拡大すると、輸入枠は110万トンを超えてしまいます。その数量を仮に飼料米で捌いたとしても、国内市場に相当の価格下落圧力がかかります。関税死守ばかりを考えていると、もっと重い宿題を背負ってしまう可能性を考えるべきでしょう。しかし、この石破大臣発言は農林族にボコスカ叩かれて撤回を迫られました。政権交代した今、もう一回、このオプションを真剣に検討すべき時だと思います。
農林水産省はこう言うでしょう、「今回は関税削減に耐えられるかもしれないが次のラウンドではもう耐えられない。だから、関税削減には慎重。」と。しかしですね、先のラウンドが終わったのが1993年で、今まだ交渉をしています。次のラウンドがあるかどうかも分からないし、あったとしても妥結するのはきっとまた15年後でしょう。そこまで今の制度を前提に考える必要はないと思います。
ちょっとテクニカルでした。しかし、これはとてもとても重要な話なのです。いつか、我が党の農林水産省政策会議でぶつけてみようと思っているテーマです。