治大国若烹小鮮
ITER
ITERという言葉をご存じですか。International Thermonuclear Energy Reactorの略でして、まあ、簡単に言うと「ちっちゃな太陽を作ろう」プロジェクトだと認識していただければいいと思います。今、北朝鮮が「核融合に成功した」ということですが、あれは解釈の仕方によっては「ITERプロジェクトに成功した」ということでありまして、どんな技術を使っても現時点では無理です。
このITERプロジェクト、数年前に日本の青森とフランスのカダラッシュというところで競い合いました。日本はアメリカと韓国がサポートに回ってくれましたが、フランスはEUでガッチリとスクラムを固めており、かなり激しくやりあいました。EUというのは一旦内部で合意が纏まってしまうと、それだけでかなりの数の国が纏まってしまうので、今の国際社会の中では非常に危険な要素になっています。その結果、最終的にはフランスのカダラッシュに決まってしまいました。まあ、決まるまでに色々とあったのはある程度知っていますが、特筆されたのはこの過程でフランス人が嘘、誹謗、中傷、何でもやったということです。基本的に、私の中ではフランス人というのはそういう人達だという認識です。日本人は正直でお人好しなんだよなあと、いつも思います。
ただ、日本も転んでもただでは起きずに、幅広いアプローチという名の下に、ITERプロジェクトと並行して先進的な核融合開発を行うことを取ってきています。技術的なことは分かりません。研究開発プロジェクトを六ヶ所村と茨城県那珂市で行うとのことです。その他にもITER機構のトップとか、ITER職員とかで優遇された立場を獲得しています。結果からすると、私はこの程度の関与に止めておいて良かったのではないかという気がしています。
というのも、最近、フランスの新聞を読んでいると「ITERは予想されたよりも多額のカネがかかる」という記事がボンボン出てきているからです。政府筋が予防線を張っているのか、環境団体等が動いているのかは分かりませんが、ともかく、最近のこのITER記事の多さは特筆されます。
当初は100億ユーロと見積もられていた費用ですが、どうもそれでは済まなさそうです。最初は10年間で46億ユーロが建設費用として見積もられており、そのうちEUが45%、その他の日本、ロシア、中国、韓国、インド、アメリカが9%ずつ負担することになっていたはずです。それに加えて、20年間の運営費用として48億ユーロで全体として100億ユーロの負担が見込まれていたということです。ただ、その後、日本がITER職員の日本人職員増員に呼応するかたちで負担を増加させています。
ただ、当初予想されていた最終的な建設費用負担(59億ユーロ)は、現時点で既に72億ユーロまで跳ね上がっているそうです。結果として、EU全体の建設負担は元々が27億ユーロだったのが、既に59億ユーロまで増加したと報道されています。結果として、他の非建設国の負担も上がってきているはずです。とてつもない見込み違いと負担増が生じています。フランス南部のカダラッシュにこの建設を行うために、とてつもなく大きな公共工事(道路建設、土地整備・・・)が行われることを考えれば、もっと跳ね上がることすら考えられます。コートダジュール地方も、このITERに協力する観点から既にかなりお金を突っ込んでいますが、この負担もかなり膨れあがってきており、地方議会に不満が蔓延しているそうです。
このITERプロジェクトは発電することを主たる目的とはしてなくて、そもそもは融合の実証実験です。つまり、すぐには実生活に利益を生み出すものではありません。プロジェクトの開始は既に2015年から2019年に後倒し、最初の実験は2026年以降、電気を生み出すための炉が作られるのは2040年、産業用に使えるようになるのが2060年、それがネットワークを形成するところまで行くのは今世紀末、まあ現代社会が抱える問題の解決にすぐに繋がるわけではないということは確実です。
実は報道によって相当に数字が異なるので、実際の負担増の水準はよく分かりませんが、相当な見込み違いが生じているということのようです。これが日本にどれくらいの負担増になっているのかも分かりません(文科省に聞いてみます)。あまり科学技術に冷たいことを言うと最近はお叱りを受けやすいのですが、直感的に「ああ、結果として、ITERそのものが日本に来なくて良かったのではないか」と思っています。
まあ、日本は六ヶ所村を擁して最後までカダラッシュと戦った経緯から言って、他の非建設国(米、中、韓、露、印)とは違ったコミットメントの深さがあるため、そう軽々に後ろ向きな姿勢を取るわけにはいきませんが、費用負担は欧州にテキトーに押しつけつつ、研究成果として取るべきものを取るという姿勢を徹底する必要があります。特に産業面や環境面ですぐに具体的な利益が得られない以上、それくらいのたかの括り方が求められます。