おがた林太郎個人ブログ

治大国若烹小鮮

郵政に関する諸々(その2)

 郵政民営化見直しについて、ジュネーブでWTO大使級会合が行われたとのことです。WTOサービス貿易協定の内国民待遇の保証に反するのではないかという懸念が表明されたようです。たしかに、郵貯と簡保については、日本は内国民待遇を約束済みですので、国内企業と外国企業で異なる扱いをしていればWTOサービス貿易協定違反になります。


 ただ、私はこの欧米の主張に何となく幾つかの違和感があります。


 まず、そもそも民間企業は預金額、保険額に上限はありません。郵貯は1000万円、簡保は1300万円の上限が掛かっていました。それを上限をそれぞれ2000万円、2500万円に上げたからといっても、やはり上限は掛かっているわけで、日本企業、外資系企業を問わず、不利な条件に置かれていることには変わりありませんね。そうやって考えると、上限を上げたからといって即座に内国民待遇違反だということにはならないはずです。むしろ、日本が自発的に国内企業に不利な条件を課しているのを内国民待遇の状態まで引き揚げて解消するくらいのことです。


 その一方で、郵政事業に付与されている税の免除についてはたしかに内国民待遇に反する可能性が大です。あと、日本郵政の有するネットワークがゆうちょ銀行にのみ提供されていることが内国民待遇に反すると主張してくることが想定されるそうです。私はここが欧米との戦いのメインフロントであるのなら、相当に苦しい戦いになると思っています。


 ただ、私が今回の議論を聞きながらいつも思うことなのですが、最終的には欧米の主張は「国の機関として大きくなった郵政事業は存在そのものが、民間企業に比して不平等。だから、けしからん。」ということに尽きているように思います。郵政関係の皆様は「一円も税金を投入していない郵政事業」と言ってはいますが、私はそれは(間違っているとまでは言わないが)誤解を招く言い方だと思います。税の免除等、様々な恩恵を受けて大きくなってきたことは事実です。そうやって国の庇護の下、大きくなった郵政事業はその存在自体が不平等な存在なのだというところから、すべての議論が始められているような気がしてならないのです。


 それを言われると、もうすべての議論が成立しないのです。存在自体が否定的にしか捉えられない以上、これはnon-starterの議論です。私はここでかつての「フェアな貿易」という概念を思い出しました。日米経済摩擦の中で、「日本は公正(フェア)じゃない」という言いがかりをつけられ、大変に困りました。ここでいう「公正(フェア)」とは何なのかと突き詰めてみると、とどのところ「自分達のモノが売れていない」ということに繋がっているのです。欧米のモノが日本で売れないのは、別に日本市場が公正でないからではなく、もっと別の要因があると私は思っているのですが、それを「不公正(アンフェア)」というアメリカ人好みの言葉で纏めてしまわれたことが不幸でした。


 全然関係ないことですが、フランスに居た時、何度も「日本は閉じられた市場だからな」と言われ不愉快になったことがあります。私は「証拠を出してみろ」と反論していました。証拠はないのです。返ってくるくる返事はいつも「こんなにルノーの車は良いのに、日本では売れない」ということに帰結していました。アホらしくて議論に値しないのですけども、それがかなり受け入れられているとのも事実の一面でしたね。


 今回の郵政事業に対する欧米の主張は、この得体の知れない「公正(フェア)」という偽装管理貿易を助長する概念に似ています。「郵政事業は国の支援を受けつつ大きくなった。だから、自由な活動を許してはならない。」、「我々(欧米)が稼げないような状態が不公正」、そんな論調です。しかし、それを言っていたら、国営企業又はかつて国営だった企業は何らかのカタチで存在自体が非難の対象になるでしょう。フランスのルノー、ドイツのドイツテレコム・・・、考え方によってはアメリカ政府の管理下にあるAIGやGM、こういう企業が日本国内で一定のシェアを持っていること自体が不公正だという結論になります。であれば、日本で今、AIGが日本企業よりも良いサービス展開していることに、日本政府はクレーム付けができるということになるでしょう。


 そもそも論になりますけども、程度の違いはあるものの、企業の歴史の中で政府からの支援を受けて大きくなったことを以て、その自由貿易性や公正貿易性を否定するような規定はWTOの中にはありません。あるとすれば、競争法の世界でしょう。でなければ、そういう企業は常に他の参入者に対してアファーマティブ・アクションをやれ、という結論が導き出されます。それは違うと思うのですね。


 郵政事業に対する欧米のケチ付けは、上記にある通り、完全に「モノの見方」が違うために生じていると見るべきです。そして、その議論は全く噛み合わないでしょう。しかし、その噛み合わない議論に我々は勝たなくてはなりません。「もし、平場で戦うことになったら返り討ちにしてやってください」と、お役所の方々には言っています。